UCLA Anderson MBA留学記 

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やり抜く力(ダイヤモンド社)

 ペンシルバニア大学の心理学の教授が書いた本です。この本によれば、成功するために必要なのは才能では無くやり抜く力(グリット)であるという事です。そして、やり抜く力を構成するのは「情熱」と「粘り強さ」だと。

 

 大して自慢できるような事を成し遂げた事が無い立場の人間からすると勇気づけられる主張ですが、ちょっと納得できない内容でした。

 

 成功するために必要なのが才能ではないと主張する根拠の一つが、ウェストポイント(米国陸軍士官学校)での研究です。ウェストポイントは入学するのがとても難しい学校で、学力、体力共に人並み外れた学生しか合格できないそうです。その難易度は、ハーバード大学に入学するよりも高いのでは、と言われているくらいらしいです。ただ、そこに入学できた学生の5分の1が、卒業を待たずに辞めてしまうと。で、最後まで残るのは決して能力が優れた学生では無く、やり抜く力がある生徒だというのです。

 

 これを読んで、「うーん、そうか?」と思いました。

 

 まず、ウェストポイントに入学できる時点で、相当才能がある人間なのではないか?と思いました。ずば抜けた学力に加えて運動神経も優れた学生しか入学できないのであれば、この集団の中で能力が高くないと言っても、一般的な学生よりも優れた能力の持ち主と考えるのが妥当でしょう。彼らには、元々トップクラスになれる素質、つまり才能があったと思います。

 

 もう一つは、卒業するまで頑張り続けたことが成功と言えるのか?という事です。別にある一定の期間頑張り続けることは、我慢できる人ならだれでもできます。でも一定期間頑張り続ける事と、何か具体的に物事を成し遂げることはちょっと違うと思います。語弊を恐れずに言えば、「24時間不眠で働けと言われて見事働き続けた=成功」というのは違うんじゃないか?という感じです。具体的にその24時間で何を達成したのか、それが成功の基準となるべきだと思います。何をもって成功と言うのかはっきりしない、という事でもあります。

 

 

 私はずっと野球をしていましたが、スポーツの世界では必ず元々もっている能力に違いがあります。この選手はどんなに頑張っても、決してプロ野球選手にはなれないなという人がいます。野球で飯を食っていくというのが成功の基準となるのであれば、彼は決して成功できません。勿論練習すればそれなりに上達しますが、そこには絶対的な才能の差があって、努力なんてもので補う事が出来ないのです。

 

 そんな選手でも、高校野球の3年間きつい練習を我慢して卒業したら、それは成功となる。この本の主張にそって考えると、そんな感じになると思います。努力し続けても、結局試合に出れなかったら成功とは言えないんじゃないでしょうか。それなら、さっさと野球は諦めて、自分が勝てそうな分野(勉強でも音楽でも他のスポーツでもなんでも良いですが)で他人よりも優れた結果を残す方が良いと思います。

 

 

 成功した人間はほぼ間違いなく情熱をもって粘り強く努力してきたのでしょう。でも、だからと言って情熱があって粘り強く頑張ったから成功できるわけでは無いと思います。もちろん例外もあるでしょうが、情熱があって粘り強く頑張った人達の中で、才能もあった人が成功したというパターンが大多数ではないでしょうか。A(情熱をもって粘り強く努力した)だからB(成功した)が成立しても、Bでない(成功していない)からAでない(情熱をもって粘り強く努力していない)とは言えませんので、他人にそんな発言をしないように心がけようと思いました。

 

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

 

 

会社の値段(ちくま新書)

 前回に続けて、もう一冊ファイナンス関連の書籍を紹介します。この本はファイナンス分野でも特に”企業価値評価”について書かれたものです。一言で企業価値と言っても、何をもって企業価値というのかは色々考え方があるようで、そのあたりが詳しく解説されています。

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石野雄一 道具としてのファイナンス 日本実業出版社

 MBAで勉強するファイナンスの内容を掴むのに良い本です。著者もインディアナ大学MBAプログラムを終了していて、そこで学んだと思われることを基礎に、ファイナンスの知識をいかに実務に応用するかという事が書かれていました。Excelでどのようにモデルを作るかについても説明があるので、あまりExcelを使った事が無い人にもわかりやすいと思います。

 

 

道具としてのファイナンス

道具としてのファイナンス

 

 

 

 私は先学期必修科目のファイナンスを受講していましたが、この本の内容は、ほぼ授業の内容に一致しています。ファイナンスの基礎として頭に入れておくべき縦横なことは、

 

・お金の時間価値(1年後の100万円よりも現在の100万円の方が価値が大きい、というあれです)

・投資判断

ポートフォリオ理論(リスクとリターンの関係)

企業価値評価(会社の値段の計算方法)

・配当政策、資本構成

金融派生商品

 

 といったところかと思います。統計の知識が無いと理解しがたい部分もありますが、ファイナンスに全く興味が無い生徒も履修するものなので、そこまで深く掘り下げることはありませんでした。この本の内容がしっかりと理解できれば、MBAファイナンスを専攻しない学生よりは深い知識を身につけられると思います。

 

 個人的には、金融派生商品の中でオプションのコール、プットの価格計算式を出すためのブラック・ショールズモデルというやつがありまして、この式が何を意味しているのか理解するのが大変でした(というか説明しろと言われても未だに良く分かりません)。計算自体はExcelで簡単にできるので、式の意味自体を理解していなくても答えが出るのですが、ファイナンスを専攻しようとしている身ですので、もうちょっとしっかり勉強したいところです。この本でもブラック・ショールズモデルの解説があります。数式そのものについての解説は省いてありますが、直観的にこの数式が意味する事を理解するという目的であれば、分かりやすい解説だと思いました。

 

 ファイナンスについて学ぼうとすると、やたらと難解な文章・数式を多用したテキストを読まないといけませんが、この本ならば割と軽く読み切ることができます。たとえ財務関連の部署に所属しない人であっても(マーケティングや経理、経営企画等であっても)、投資判断や収益予想などでファイナンスの知識を必要とする場面があるので、基本的なことは抑えて置いて損はないと思います。

 

 

 

道具としてのファイナンス

道具としてのファイナンス