UCLA Anderson MBA留学記 

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池尾和人 『現代の金融入門』 ちくま新書

 本書は新書であり分量はそれほど多くないのですが、金融取引・銀行システム・金融政策からデリバティブまで金融の基礎が一通り書かれていて金融について基礎的な知識をつけるのにとても良い本だと思います。

 

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

 

 

 入門と言っても、金融をほとんど知らない人が読んで「分かる分かる!」と感じるようなものでは無いです。実際に、私自身銀行に入行した直後この本を読んだはずなのですが、「良く分からん」という印象のみで本の内容を何一つ覚えていませんでした。

 

 さすがに数年間金融の世界に身を置くと、既に知っている項目、別の本などで少しずつ知識を広げていった部分などが目に付くようになり、新たな知識と併せて適度な刺激と共にストレス無く読むことができますね。利率の期間構造、資産価格の算出理論、オプションの理論なんかは別の本を用いて苦労しながら学んでようやく分かるようになってきたのですが、この本でも簡潔に触れられていて、「なんだ、5年も前に既に目にしていた内容なのか」と驚きました。本を読む時点での知識のレベルや問題意識によって脳に入る情報には大きな差があるんだと実感しました。

 

 MBAのクラスのファイナンスの授業で扱う内容は本書よりも難しかったと記憶していますが、東大の経済学部卒の友人はそのファイナンスのクラスについて「全部学部時代に習った内容で、新しい学びが何もない」なんて言ってましたので、大学で金融の授業を取っていた人にとっては、本書の内容は物足りないのかもしれないですね。

 

 

 銀行で業務に携わっていると、こういったマクロな視点での知識には目がいかないと思います。それよりもどうやって顧客の心をつかむかとか、具体的な金融商品について学ぼうとか思います。勿論それはとても大事なんですが、どこかのタイミングで金融全般に及ぶ広範な知識が活きる場がある、と思って読んでます。

NPB以外の選択肢 彩流社 宮寺匡広著

 大学野球部の1年先輩、且つゼミの先輩でもあった方が最近本を出版されたとの事で読んでみました。

 

NPB以外の選択肢: 逆境に生きる野球人たち (フィギュール彩)

NPB以外の選択肢: 逆境に生きる野球人たち (フィギュール彩)

 

 

 学生野球を終えると、ほとんどの選手は野球から離れ、普通の社会人になります。プロ野球や社会人で野球が続けられる人はほんの僅かで、続けたくてもやる場所が無いというのが現状だと思います。

 

 宮寺さんは一度就職されたのですが、野球を続けたいという思いが強くアメリカの独立リーグに挑戦されています。アメリカの独立リーグメジャーリーグとは完全に別の組織で、独立採算で運営されています。

 

 

 実は先学期のMBAの授業の中でゴールデンベースボールリーグというカリフォルニアの独立リーグ設立のケースを扱いました。経営的な視点で考えると、メジャーリーグのチーム経営は規制が多く(AAAのチームを立ち上げる為には球場を所有しないといけない、他チームが本拠地を構える近くには新しいチームを設立する事ができない等)、独立リーグに魅力を感じて新しいリーグを立ち上げる人が多いようです。一方で採算を取ることは当然難しいので、すぐに閉鎖になっているリーグも多々あるようですね。話がずれるので、リーグ運営の話はこの辺で。

 

 

 私は実際にプレーした事が無いので詳しく分かりませんが、独立リーグは正に実力主義といった所で、結果が出なければ即解雇もありうる厳しい世界です。また、給与面もメジャーリーグに比べると劣るようで、過酷な環境です。それでも野球を続ける為に、過酷な環境に飛び込んでいく日本人選手が増えているようですね。 

 

 この本の中では、宮寺さんのように野球選手としての場を求めてアメリカに渡った人達のインタビューがまとめられています。給与や雇用条件を考えると、軽い気持ちでチャレンジできるような世界ではありません。それでも好きな野球を続ける為にそういう環境に飛び込むことができ、自分が好きなことに正直に生きている彼らの話を読んでいると、その情熱と行動力を尊敬しますね。普通そこまで出来ないですよ。

 

 宮寺さんは卒論のテーマが野球でしたし、大学時代も人一倍練習熱心だったと記憶しています。室内練習場でいつもバッティング練習してましたし、初動負荷のジムにもずっと通っていました。決して感情を表に出したり、口数が多い方では無かったですが、野球に打ち込む熱意はすごいものがありました。そんな彼だからこそ、安定した職を犠牲にしてまでもアメリカに渡れたんだろうと思います。普通ならさっさと野球を諦めてしまうはずです。で、そう決断した自分を、あらゆる理由をつけて正当化してしまうと思います。すごいの一言に尽きます。

 

 また、インタビューを受けた選手の一人は大学の2年後輩です。学生時代はそんなに関りがありませんでしたが、大学時代からここまで考えて野球してたのかと驚きました。

 

 

 あと、この本を読んでいて「分かるなー」と思ったのは、日本の野球界のやり辛さですね(まあ、日本以外で野球した事が無いので比較は出来ないですが)。やたらと上下関係と忍耐を重視して、野球が上手くなくても人間ができれば良いみたいな雰囲気とか、あまり好きじゃないんです。発言すら気軽にできないですしね。圧倒的に指導者の側が強いですし、部の方針に異論を唱える部員は生意気だと思われがちだと思いますし。また、別に責任を取ってくれるわけでもないのに、外部の人たちが評論家宜しく好き勝手なことを言って、勝てなければ色々と口を出してきますし。

 自分が野球してた頃はボケっとして言われたことに疑問も持たずに「はいはい」言ってやってましたけど、大学入ってからですかね、だんだんと疑問を感じるようになったのは。高校野球は未だに丸刈りにする学校が多いですが、批判を覚悟で言うと、あんなの時代錯誤としか思えないですよね。野球に集中できるとか、伝統だとか理由つけて強制的にさらせてますけど、ボーズにしたら野球上手くなるのか?球速くなるか?打球が飛ぶようにでもなるか?そんなわけ無いだろと。繰り返し言いますが、学生野球では圧倒的に指導者の側が強いんですよね。ボーズが嫌なら野球辞めるか軟式にするか・・・そんな意味無い事いつまで続けるんだろうと。それでも選手たちはその環境に耐えてやるしかないわけですから、彼らには頑張ってもらいたいなと思います。

 今の日本の野球環境がすぐに変わるとは思わないですが、アメリカに行く人が増えて、それを日本の野球界に還元する人も増えると日本の野球界も変わって面白いのかなと感じました。

 

 

 アメリカにいる間に独立リーグを観たいと思いました。そして、時間があれば宮寺さんに会って話を聞きたいですね。とても面白い本でした。

捨てられる銀行2 非産運用 講談社現代新書

 最近は金融関連の本を中心に読んでいます。積読状態の100冊ほどの本を読み終える目途は立っていません…。

 

 羽田空港でちょっと時間があったので、本屋で買って読みました。前作も読んだ気でいましたが、どうやら読んだ事が無いみたいでした。

 

捨てられる銀行2 非産運用 (講談社現代新書)

捨てられる銀行2 非産運用 (講談社現代新書)

 

 

 顧客利益と会社利益の溝の深さに目をつけて、会社利益を最優先して経営する日本の金融機関を批判する内容になっていました。先日森金融長官の続投が決まりましたが、彼が推し進める「真に顧客本位の業務運営」(フィデュ―シャリー・デューティー)についてもかなりスペースを割いて書いてありましたね。

 

 銀行の貸出金利が低下を続ける中、各銀行は別の収益源を確立すべく模索しています。しかしながら、利幅の大きい個人ローン・カードローンを積極的に伸ばしたところ過剰融資が問題視され、アパートローンを伸ばしたところこれも問題視され、リスク性資産の運用比率を上げたところ「素人同然の集団が過剰にリスクを取っている」と非難され…どうあがいても収益を伸ばせずに最終的に合併・再編の方向にもっていこうとしている印象もあります。

 

 金融庁の方針はさておき、金融において顧客と企業の利益が一致するような経営をしているところは殆どない。というのが現状じゃないかと思います。本書では資産運用において本当に顧客にとって好ましい商品ではなく、手数料率が高い商品を中心にセールスが行われていると批判されていました。また、最近「お金のことは銀行員に相談するな」と主張する記事をよく目にします。まあ、これは残念ながらその通りと言わぜるを得ないでしょうね。

 

 というのも、一つには銀行員の成績は銀行にどれだけの利益をもたらしたかによって評価されるからです。自分が担当していた期間に顧客の資産が何倍になろうと、関係ありません。たとえ資産が減っていても、会社に多額の利益をもたらせば「できる行員」となるわけです。だから、ノルマを達成する為に手数料を優先して販売する行員が多くても不思議ではないです。まあ、あまりにも露骨にそんなことやると当然問題になりますし、顧客にも信頼されないでしょうから、そこは上手く立ち回るのでしょうが。

 

 もう一つは、銀行員自体金融商品について精通していると言えないからです。いや、もちろん中には知識豊富で顧客本位に考える素晴らしい行員も沢山いると思います。ただ、一定数精通していない人間もいるはずです。余り知識の無い人が、もっと知識の無い人間に商品を販売する、そんな感じです。商品を理解していない人が選ぶわけですから、くじで商品を選ぶのと大して変わらないでしょう。もっとも、投資のプロが選んだからと言っていい成績になるわけでもないらしいですが。

 頭がいい人なら少し勉強すればすんなり金融商品を理解でき、顧客の金融知識や資産構成に応じてふさわしい提案もできるのでしょう。でも、少なくとも私には難しいですね。目論見書とか読んでも頭の中が?だらけになります。勿論それらしい理由をつけて推奨することは出来るでしょうが、推奨する根拠を誰にでも明確に分かるように説明する事は出来ないでしょうね。

 

 

 金融について勉強していくと、必ず自社が取り扱っている商品よりいいものが見つかります。いったんそれを知ってしまうと誰かに相談されたときに他者の商品を進めたくなる時があります。でも、そうすると自分が勤めている企業を裏切ったような気分になります。でも、逆に自社の商品を進めると相談してくれた人をだましたような気になります。

 

 長らく金融関係の仕事をしている人だと、「そんなのきれいごとでしょ」と言うかもしれませんが、私は少しでもきれいでいたい、あえて汚い事はしたくないと思います。

 そういう点では、本書で紹介されているバンガードや、手数料率を開示して営業しているライフネット生命なんかは好感が持てるのです。ああ、顧客と企業の利益をできるだけ=に近づけようとしているんだな、と感じます。