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ストラテジー(必修科目)

 バタバタしている間に前回の投稿から早くも1ヶ月経っていました。冬学期が半分ほど終わったことになります。あっという間ですね。

 

 今期の必修科目の一つにストラテジーがありますので、今回はこの授業の内容について書きたいと思います。ストラテジーの授業では、毎週ケースが与えられてそれについてクラスで議論しながら、如何にして企業が置かれている状況を正しく把握し、適当な戦略決定を行うかを学ぶものだと思っています。

 

 この科目に限らずですが、基本的にケースは全部HBS(ハーバードビジネススクール)の教材が用いられます。まれにUCLA独自の教材もありますが、こういったケースを作るのはかなりの労力を要するみたいですね。

 

 私自身もそうだったのですが、そもそもストラテジーって何なの?と言われるとなかなか適当な言葉が見つかりません。授業の中では、

「An integrated set of choices that positions a firm in an industry so as to generate superior financial returns over the long run」

 と説明されました。「企業がある産業の中で、長期的に他者より大きな利益を上げるための一連の選択」といったところかなと思います。

 

 直観に頼って戦略を判断するのではなく、極力定量的分析を用いて企業が置かれた状況を把握し、合理的に戦略を決めていく事に重点が置かれます。  

 

 

 最初の授業では、ビールメーカーのCoorsのケースを取り上げました。Coorsはコロラドに拠点を置くビールメーカーで、1975年においてアメリカ11州にビールを供給していました。製造方法に拘り品質を重視する一方で、1バレル当たりの価格は業界大手のBuschやMillerより低いという、高品質低価格を売りにしていました。ところが、70年代後半に初めて売り上げが減少した事から、1980年代前半にノースカロライナに新たな工場を建設し、更に広告宣伝費を大きく増やすことで競合からシェアを奪おうとしました。

 

 198年代前半にCoorsが下した判断は正しかったのかどうか分析するのがこのケースの課題です。このほかケースには1977年及び1985年の各社の収益と販売量のデータ、この期間における各社のシェア等のデータが与えられていて、Value Stick Analisisという分析手法を用いて分析していきました。

 

 Value Stick Analisisで出てくるのはWTP(Willingness to pay)、Price、Cost、WTS(Willingness to supply)という4つの指標です。WTPは顧客から取ることができる金額の最高値の事で、これより価格を上げると彼らは商品・サービスを購入しません。顧客が払いたいと思う金額の限度という感じですかね。WTSは商品・サービスのもとになる材料を供給者から仕入れる金額の最低値です。これ以下で仕入れようとすると、供給者は材料を売ってくれないので、商売をすることができません。

 

 よって、企業はWTS以上の金額で材料を仕入れて、WTP以下の金額で消費者に商品・サービスを売ることになりますので、商品・サービスの価格(Price)と費用(Cost)はこの間に位置することになります(下にある図で確認してみてください)。顧客のWTPを向上させるためには、商品の性能を向上させたり、サービスの質を上げたりする必要が有るので、Costも上昇します。逆にCostを抑えようとすればその分質が落ちるので、WTPも下落することになります。つまり、この二つはトレードオフの関係になるのです。

 

 企業が業界内で他社よりも収益を上げる為には、WTPとCostの差を大きくすることが重要です。この差を大きくするための方法は大きく2つあって、それぞれコストリーダーシップ戦略と差別化戦略と言われます。コストリーダーシップ戦略は「WIPの低下<コストの低下」となるように他社よりも生産コストを下げる戦略です。日本企業で言うとドン・キホーテなどのディスカウントストアが該当するでしょうか。差別化戦略は「コストの増加<WIPの増加」となるように商品の質やブランドイメージを向上させる戦略です。高級車や高級ファッションブランドなんかがこっちの分野ですね。 

 

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  こちらはコストリーダーシップ戦略の図です。当初Firm2がPrice1の値段をつけていたら、顧客は当然Firm1の商品を買うでしょう。しかしながら、Firm2はCostがFirm1に比べてはるかに低いので、Price2まで価格を下げても利益を出すことができます。Firm1はFirm2と同額まで価格を落とすと赤字になるので、対抗することができません。結果、Firm2が市場を奪う事が出来るわけです。

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 そしてこちらが差別化戦略の図です。Firm1がPrice1の価格で売っていた場合、顧客からするとFirm2の商品の方がWTPとPriceの差が大きいので、そちらの商品を購入します。ただ、Firm1の方がWTPとCostの差が大きいので、Price2の価格で売れば顧客はこちらを選択します(今になってよく考えると、差別化戦略はCostを上昇させる以上にWTPを上昇させる戦略なので、なんとなくこの図の説明と合わない気がしますが、教授が上の図を用いていたのでそのまま引用しています)。

 

 

 Coorsと他社の業績を比べると、他者と比べて売上高に対する変動比率が10%ほど低いことが分かります。ここで「ああ、この会社はコストを抑えて利益を上げているんだ」と思わないことが重要だと指摘されました。売上高と費用の比率だけでは、この会社がコストを他社よりも抑えているのか、それとも商品1単位当たりの価格を上げているのか分からないからです(いかに高品質低価格と謳っていても、本当に他社より低価格なのかどうかは1単位当たりの価格を見てみないと分かりません)。

 

 幸い(というか意図的に)このケースの中には各社の販売量も掲載されているので、この数字を用いて1バレル当たりの収益性を分析する事ができます。1バレル当たりの価格は他社が$46程度に対してCoors$42と、競合よりも低価格です。一方変動費は他社が$36に対してCoorsは$29、宣伝費はBusch$2、Miller$2.5に対してCoors$1.1、そして営業利益は他社が$4.5程度なのに対してCoorsはなんと$8.5と、コストリーダーシップ戦略によって利益を上げていることが分かります。

 

 アメリカ東部に新たな工場を建設し多額の広告宣伝費を投じた結果、1987年における1バレル当たりの収益は以下のように変化しました。

 

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 単位当たりの利益率が大幅に低下したことが分かります。自社がコストリーダーシップ戦略によって利益を上げてきたことに気付かず、宣伝費に多大な費用を投じたために、優位性を失ってしまったのです。

 

 その後も低迷が続き、当社はカナダのビールメーカーに買収されてしまいました。今でもCoorsのビールは有名ですし、特にCoors Lightという少しアルコール度数の低い商品が若者を中心に人気です。

 

 

 まあ、こういった分析をしてみたところで結局後付けの理由じゃないかという人も多いですし、クラスメイトの間でも評価が分かれます。個人的には、自分が属する企業が経営戦略を立てる際に、自社の置かれた状況を合理的に理解するための分析の選択肢が増えればよいのかなという感じで考えています。ある程度思考の引き出しを持っておけば、選択が必要となった時により迅速に取り掛かることができるのかなと。

 

 

 

 いざこうして文章を書こうとしてみると、自分自身あまり講義の内容を理解できていなかったことがわかるので良いですね。