諦める力(プレジデント社)

 前回「やり抜く力」という本を紹介しました。書いた通り、この本は私の考えとは一致しないところが多かったです。情熱と粘り強さがあっても、出来ないものは出来ない。才能という高い壁があって、それはどうあがいたところで乗り越えられるものではない。これが私の考えです。

 

 今回紹介する本は、そんな私の考え方に割と近いと感じました。どんなに努力しても勝てない分野がある。だからこそ、自分が勝てる分野を見つけてそこで勝負するのが大事、そういう主張でした。タイトルの諦めるというのは決してネガティブな意味では無く、「諦める=見極める」という事です。

 本の中には、次のような説明があります。

 

 “ 世の中 には、 自分 の 努力 次第 で 手 の 届く 範囲 が ある。 その 一方 で、 どんなに 努力 し ても 及ば ない、 手 の 届か ない 範囲 が ある。 努力 する こと で 進める 方向 という のは、 自分 の 能力 に 見合っ た 方向 なの だ。   自分 とは 違う 別人 を モデル に し て「 あの 人 の よう になり たい」 と 夢想 する 人 は 多い。 その とき に 気 を つけ なけれ ば なら ない のは、 その 人 と 自分 の 出発点 が そもそも まったく 違う という こと だ。   それでも「 似 た タイプ」 で あれ ば、 近づく こと も、 追い抜く こと も 可能 だ と 思う。 しかし、 純粋 な 憧れ だけで ある 人 を 目標 に 努力 し た 場合、 それ が 自分自身 の 成長 を 阻害 する 要因 に なる こと も あり うる。”

 

 “人間には変えられないことのほうが多い。だからこそ、変えられないままでも戦えるフィールドを探すことが重要なのだ。僕は、これが戦略だと思っている。戦略とは、トレードオフである。つまり、諦めとセットで考えるべきものだ。だめなものはだめ、無理なものは無理。そう認めたうえで、自分の強い部分をどのように生かして勝つかということを見極める。極端なことをいえば、勝ちたいから努力するよりも、さしたる努力をすることなく勝ってしまうフィールドを探すほうが、間違いなく勝率は上がる。”

 

 この考え方は、今自分がビジネススクールで学んでいるストラテジーの考え方と同じです。企業も自分が競合に勝てる分野を見出して戦わないといけない。例えば、街の小さな商店がドン・キホーテに対抗して低価格戦略で挑んでも、間違いなく負けるでしょう。こういった場合、「正面から正々堂々と戦ったのだから、立派なもんだ。努力したことに意味がある。」なんてことにはならないでしょう。ビジネスとして成り立たなければ、どれだけ頑張ったかなんて意味が無い。それならば、地元産の農作物、海産物を幅広く扱ったりして差別化して戦った方が良い。価格という点で諦めることが必要です。

 

 これがスポーツになったり勉強になったりすると、とたんに我慢する事、努力することに重点が置かれます。そこで結果が出なければ、努力が足りないと言われ、途中で諦めれば我慢が足りないと言われる。

 

 

 “スポーツ の 世界 では、 とりわけ「 中途半端 な ところ で 諦める べき では ない」 という 価値観 が 強い。 途中 で 諦め たら、 どの 世界 に 行っ ても 同じ こと が 続く ぞ、 と お決まり の よう に 言わ れる。 そう 言う 人 には 聞い て み たら いい。 「では、 あなた は 僕 が やめ ず に 続け た として、 どの くらいまで いく と 思い ます か」   その 問い に対する 答え が 具体的 で 根拠 の ある もの なら、 考え直す のも あり だ と 思う。 しかし、 ただ「 諦める な」 と 言っ て いる だけ なら 聞き流せ ば いい。”

 

 これはだめだと思ったら、やめればいいと思います。次のステージに移ればいいと思います。自分が戦えるステージで、正しい努力をするのが重要です。

 

 

 

 最後に、話の内容が変わるのですが、以下の記述も印象的でした。

 

 “ 人は場に染まる。天才をのぞき、普通の人がトップレベルにいくにはトップレベルにたくさん触れることで、そこで常識とされることに自分が染まってしまうのが一番早い。人はすごいことをやって引き上げられるというより、「こんなの普通でしょ」と思うレベルの底上げによって引き上げられると思う。今までいた場所で、今までいた人たちと会いながら、今までの自分でない存在になろうとすることはとても難しい。”

 

 これは、慶応大学の野球部に入った時、ビジネススクールに入った時に強く感じました。決意を新たにしたり、目標を高く掲げてみたところで行動が変わらなければ何も変わりません。それよりも、自分がいる環境を変えてしまう方がずっと手っ取り早い。環境が変われば行動が自然と変わり、結果も自ずと変わってくるものなのだと、実感しています。