UCLA Anderson MBA留学記 

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マーケティング(必修科目)

  今回は今期の必修科目であるマーケティングについて書きます。銀行に勤めていると、マーケティングに直接携わるのは営業企画部の行員位なのであまりなじみが無い分野です。良くマーケティングは正解が無い分野だと言われます。まあ、ファイナンスも絶対的な正解は無いと思うのですが、マーケティングの方が曖昧さが大きいかなという感じです。

 

 

 マーケティングの授業は週に2回あります。1回目はレクチャー形式で概念の説明、2回目はケーススタディで、毎回2チームがプレゼンテーションをして、その提案内容についてクラスで議論を行います。レクチャーとケースが交互にあるので、マーケティングを初めて学ぶ学生にとってはバランスが取れた形式だと思います。

 

 今学期の授業で学んでいる重要なフレームワークは以下の3つです。

 

・3C

 企業を取り巻く環境を理解する為に利用されるフレームワークです。聞いたことがある人、実際に仕事で使っている人も多いのではないでしょうか。CはそれぞれCompany(自社企業)、Competitor(競合他社)、Customer(顧客)の頭文字です。これら3つの要素を調べる事で、企業が置かれている状況を理解し、状況にあった企業戦略を取ったり、マーケティング戦略を考案しようとするものです。

 

・STP

 これはSegmentation、Targeting、Positioningの頭文字です。まずはSegmentationで顧客を何かしらの基準(企業規模、年代など)によって分類します。次に、Targetingによって企業が特に注力してマーケティングすべきカテゴリーを選択し、Positioningによってそのターゲットにどのような形で訴求するか決定します。Positioningは長々と自社製品の長所や特徴を述べるよりも、簡潔に1文で明示できるようにすべき、との事でした。長々と説明されても、顧客にはポイントがつかみにくいのです。授業の中では、以下のような形式が例として紹介されました。

 

For [target segment], the [product] [most important claim]
because [single most important support].

 

・4P

これも良く使われるフレームワークですので、知っている人が多いかと思います。4つとはPrice、Product、Place、Promotionの事です。自社が置かれた環境を理解し、注力すべきターゲットを決定したうえで、具体的にどのような形でマーケティングするかを決める為の概念です。

 

 各授業でこれらのフレームワークの中の1点(たとえば3Cの中のCompetitorとか、4Pの中のPrmotion)に的を絞り、どのように分析していくべきか、気を付けるべき点は何かを学びます。ケースにおいては上記のフレームワーク全てを用いたうえで提案することが求められますが、その中でも特に直近のレクチャーで習った概念に注目して、時には具体的なツールを用いて分析してチームとしての答えを出します。

 

 

 

 先日取り組んだもので、MBAマーケティングの授業で定番ともいえるケースがありました。「Optical Dstribution, Inc.」というハーバードビジネススクールのケースで、アメリカのMBA学生の半数以上が習うと言われる有名なものです。

 

 

 Optical Dstribution,Inc.(ODI)は企業の名前で、新事業に取り組むスタートアップです。この会社は、鶏用のコンタクトレンズを開発して農家向けに売ろうとしています。ちなみにこのケースは1970年代のものです。このスタートアップがどのようにマーケティングを行うべきか検討して、提案せよというのが課題です。

 

 

 なぜ鶏用のコンタクトレンズなんだ?と思う方も多いでしょう。私もなんで?と思いました。

 

 鶏の社会は階級がはっきりしているようで、身分の低いものが頭を高く上げると上のものに攻撃されるのです。この攻撃はかなりしつこく行われるようで、攻撃された鶏は死に至ることもあります。鶏が死んでしまうと農家にとっては卵を産む鶏が減ることになるので、農家は何とかしてこの争いによる鶏の死を防ごうとするのです。

 

 ある時、農家の人が白内障になった鶏を別のケージに移したところ、鶏同士の争いが著しく減り、飼育が容易になったというのです。白内障の鶏は視力が悪いので、エサを探すために常に頭を低くしておく必要が有る為、結果として身分の高いものが低いものを攻撃するという習慣が無くなるというからくりです。

 

 これに注目した人物が、鶏の視力を低下させる為(良くする為じゃありません)のコンタクトレンズを売り出せば、ヒットするだろうと考えて起業したのです。

 

 もちろん3C、STPを用いての分析もしましたが、このケースのキーポイントは“Price”と、売り上げ予測とそれに応じた予算の見積もりでしたので、それらの説明は省きます。

 

 まず価格決定についてですが、このケースではEVCモデルというものを用いました。公式にすると以下のようになります。

 

Economic Value =Reference Value + Differentiation Value

 

 Reference Valueは競合製品のコストの事、Differentiation Valueは本製品が提供する、競合品とは異なる価値の事です。その和がEconomic Valueとなるので、本製品のコストと、このEconomic Valueとの間で価格を決定することになります。ケースの中でいろいろな数字が数字が与えられていますので、そこから自分でEconomic Valueを算出して価格を割り出しました。

 

 

 もうひとつ、このコンタクトレンズは全くの新製品ですので、売上の予測が困難です。新製品が市場に投入された場合、一度に全体に広がることはまずありません。まずごく少数の顧客が購入し、時間が経過するとEarly Adoptors、Early Majority、Late Majorityへと広がっていきます。その広がりを予測する為のツールとして、BASS Modelというものを用いました。公式は以下の通りです。

 

where ()St represents the incremental sales in period t and Y represents the cumulative adoptions to date

 

 なんとも恐ろしい式ですね。まあ、実際はすでにソフトが作ってあるので、それにpとqとmを入力すれば勝手に計算してくれるのですが。

 

 

 こんな感じで定量的な計算をすると、今の計画では全く資金が足りないことがわかるので、1年目は売り出すことなくレンズを無料提供して認知度を上げ、2年目から少しずつマーケティング費を拠出しながら事業拡大を目指すのが妥当なところ、という結論に落ち着きます。

 

 

 モデルにどのような数字を入れるのか、どのセグメントに注力するべきかといったところははっきりとした正解が無いので、結局ケースの答えもこれといった正解が無いまま終わります。そういう考え方もあるよね、という感じでふわっとした内容になります。いくつか方法が考えられる中でどれを選択するのか、そこに個人や組織としての能力や経験が問われるんでしょう。個人的には、もう少しかっちりと答えが出るような形にならないかと思うわけです。