銀行員のUCLA MBA留学ブログ 

MBA・金融・LA生活などについて気ままに書いています

読書感想 ダニエル・ピンク著 『フリーエージェント社会の到来』 ダイヤモンド社

 懲りずに本を読み続けています。

 

1冊本を読むと、それに関連がある本をまとめて読みたくなってしまいます。

 

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

 

 原書は2001年に書かれたものなんですが、今読んでも全く色あせていないですね。

 

 

本の内容

 

20世紀はオーガニゼーションマン、つまり会社員の時代でしたが、これからはフリーエージェントの時代になる。と予想している本です。

 

フリーエージェントとは、組織に属さずに個人で稼いでいく働き方です。フリーランスと言われることもありますね。日本でも一部で流行っている生き方です。

 

この本の執筆時に、アメリカでは労働者人口の約4分の1がフリーエージェントと推測されています。約3,300万人ということですから、かなりの人数です。

 

因みに、この本の筆者もフリーエージェントです。彼は何冊か本を書いていますが、どれもベストセラーになった有名な人物です。元々は譲委員議員の首席補佐官やアル・ゴア副大統領のスピーチライターなどをしていました。

 

 

日本と同じく、アメリカでもかつては忠誠心と引き換えに企業から安定を保証してもらうという関係が当たり前でした。しかしながら1990年代以降は経営環境が変わり、大企業でも終身雇用の方針を転換して大規模なリストラを行うことがありました。

 

同時に、雇用者の側にも変化が出始めます。かつてはお金(給料)が大事でしたが、今はそれよりも仕事に意味を求めるようになったのです。

 

ここで意味とは、

  • 自由
  • 自分らしさ
  • 責任
  • 自分なりの成功

だと説明されています。

 

本書ではマズローという心理学者の段階欲求説に基づいて述べてるので、一応彼が唱えた5段階欲求の図を載せておきます。

f:id:toshihisa1527:20171208182933p:plain

下にある欲求が満たされて初めて、上にある欲求が出現してくるという説です。

 

豊かな時代になって、基本的な欲求が満たされ、労働者はより高層にある欲求を求めているのに、組織はそれにこたえる事ができないのです。

 

そうした環境の変化、また人間の変化に企業が対応できないという事などがあって、多くの人間がフリーエージェントとして生きる道を選んだのです。

 

現状、アメリカの制度はオーガニゼーションマンを基礎にして作られたものであるためにフリーエージェントを阻むものが多いですが、だからといって今の流れが変わることは無い、と言っています。

 

今後より多くのフリーエージェントが生まれ、それに応じて社会も大きく変わる、筆者はそう予測しています。

 

 

感じた事

 

 読んでいてなるほどなー、と思ったところをいくつか書きます。

 

まずは、収入源を増やすことに対する記述です。以下、そのまま引用します。

 

今の時代に、組織に勤めていて、サイドビジネスをしようとしなかったり、起業の為のビジネスプランをつくったり、脚本家を目指してシナリオを書いたり、eベイでものを売ったりしていない人は、現実を見ていないと言われても仕方がない。副業を持つことは、自分の人的資本の投資先を分散させることだ。

 

これって、以前本を紹介した尾原和啓さんや橘玲さんの主張と同じですよね。依存先を増やすという事、人的資本を分散させるという事はほぼ同じ意味です。 *1

 

未だに大企業の社員や公務員といった仕事は「安定」という言葉とセットで語られます。しかしながら、安定していると思いこんでいたものが実はとても脆いものだったという事が少しずつ分かってきました。

 

どんなに信頼していようが、忠誠心を持っていようが、崩れるものは崩れます。それ自体は避けようがありません。避けるべく努力はすべきですが、個人の力で出来る事は限られています。だから、そういった事態があっても大丈夫なように普段から依存するものを増やしていく、それが今後ますます重要になるのだと思います。

 

別に休みの日に昼までゴロゴロ寝たり、テレビをボーっと観ていたり、飲み会で何時間も愚痴を言い合っていてもいいと思います。でも、自分で何も努力してなかったくせに万が一今自分が依存しているものが崩れ去った時に「国や企業は自分たちの生活を守るべきだ」みたいなことを言っても、都合よく責任転嫁する人間になってしまいます。そんな人間にはならないようにしたい、と思うものです。

 

 

「定年退職は過去のものとなる。」という記述もありました。

 

理由として、供給面(仕事をする人間の側面)では

  • 平均需要が伸び、生活水準も向上した(定年後も働ける)
  • 高齢者は働き続ける事を望むようになった
  • 高齢者は、自分の好きなように働きたいと思っている
  • ベビーブーム世代が受け取る遺産はかなりの金額になる(フリーエージェントとして働く軍資金になる)
  •  高齢者の間で、インターネットが急速に普及している

といった事が、需要の面では労働力の不足という人口動態上の傾向が挙げられています。

 

日本の場合は全く同じ条件とは言えませんが、それでも人口の減少を理由に年金制度がいずれは破綻する事がほぼ確実となりました。もしも100歳くらいまで生きるのであれば、60歳や65歳で仕事を辞めてあとは働いていた頃に蓄えた貯蓄でやりくりしていくというのは非現実的です。

 

好むと好まないにかかわらず、60歳、65歳を超えても働かなければならない時代になりつつあるのです。そういう時代にこそ、自分で稼ぐことができる力がある人物、つまりフリーエージェントは強いですよね。組織に頼ることなく、体力がある限り稼ぎ続ける事が出来るわけですから。

 

 

「個人が株式を発行する時代になる。」というのも面白い発想ですね。実はこれ、既に日本で実現されています。

 

valu.is

資金を得て何かやりたいと考えている人(Aとします)が、「VA」と呼ばれる株のようなものを不特定多数に売り出します。AはVAと引き換えに資金を得る事ができます。これでやりたい事を実現する事ができます。

 

そしてVAを手に入れた不特定多数の人たちは、このVAを他者と売買することができるのです。人気がある人のVAであれば買いたい人が多くてVAの価値は上がりますし、誰も買いたいと思わないような人物のVAであれば、もちろん価値は下がります。

 

まさに株のような仕組みです。(VAはビットコインを通じてやり取りされるので、ビットコインの価格変動によってかってにVAの価値も上下します。今はビットコインの価格がぐんぐん上がってますので、何もしなくてもVAも上昇します。)

 

今はごく限られた人達しか利用していませんが、今後普及していくかもしれない面白いアイデアだと思います。

 

 

著者が予測されたことがいくつも現実になっていて、この著者は未来を予測する力に長けたすごい人物だと思ったでしょうか?

 

私としては、むしろ彼が予測したからそれが現実になったのではないかと思います。彼のような著名な人物がある予想をすると、それに感化された人たちがそのアイデアを実現しようと動き出します。その結果、予想が自己実現しているという感じです。

 

 

まだまだ組織に属して働くに人が大多数を占め、ある意味「常識」であると捉えられています。しかしながら、その常識も長い歴史の中で見ればごくわずかの期間定着してきたものにすぎません。時代と共に常識も変わりうる、という事です。

 

フリーエージェントが「常識」になる日もそう遠くないのかなと思わされる本でした。

 

*1:人的資本:ファイナンスでは将来得られる所得の現在価値を指します。現在価値というのは、未来に受け取るお金を現在の価値に直したものです。今の100万円と1年後の100万円を比べると、今の100万円の方が価値が高いです。これは、今手元にある100万円を運用すれば、1年後には利子がついて100万円以上の価値になるからです。通り将来のお金になるほど現在価値は小さくなります。