銀行員のUCLA MBA留学ブログ 

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読書感想 『金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実』 橋本卓典著 幻冬舎新書

金融庁の知人がSNSでシェアしていたので買って読みました。

 

その知人にこの本の感想を尋ねたところ、

 

「いや、読んでない」

 

との事。読んでよ。

金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な現実 (幻冬舎新書)

 

日本の金融機関はごく一部の優良顧客のみを相手に融資をしていて、本来融資を必要としている人々、事業者に目が向いていない。また、もっぱら担保と保証に頼った審査をしているために、事業の将来性があっても融資を受けられないことがある。

 

どこの金融機関も同じようなビジネスモデルで同じカテゴリーの顧客を奪い合い、低利率→利益減少へとつながっている。担保や財務諸表といった過去ではなく、事業性という将来を見てビジネスモデルを転換し、排除を無くしていかないと既存金融機関はどんどん衰退していく。

 

これが本書の主張であると理解しました。

 

金融庁の森長官が近年進めている政策と近いと感じました。本にを読む中で感じた事をいくつかメモしておきます。

 

  • 日米の金融機関の違い
  • 銀行員が事業性を見ることは可能なのか?
  • 事業性を見て融資するという戦略を大規模で実施するとどうなるのか?

 

日米の金融機関の違い

 

アメリカに来てすぐの頃、アメリカって金融機関が沢山あるなと思って日本との数の違いを調べてみたことがありました。2012年度には日本の預金保険対象金融機関は586あったのに対して、アメリカでは銀行だけで7,000余りありました。人口の差は2.5倍くらいですし、GDPは当時3倍に満たない位です。

 

「ああ、別に金融機関の数が多いわけでは無いんだな」と思いました。アメリカではこれだけたくさん金融機関があるのに、日本のような激しい利率競争は起こっていません。

 

もう一つ興味深かったのは、金融機関の企業規模です。日本の金融機関で資産が100億円以下のところは0であるのに対して、アメリカでは資産が1億ドル未満の銀行が2,000行以上も存在します。グローバルな巨大銀行のイメージばかりが先行しますが、実は非常に小さい規模の銀行がたくさん存在するんです。

 

また、日本の企業は中小企業であっても複数の金融機関と取引するのが一般的ですが、アメリカの場合は1行取引(1つの金融機関しか利用していない)の中小企業が8割にも上ります。

 

そこまで詳しくアメリカの金融機関を調べたわけでは無いので深い事は言えませんが、そもそも日本の銀行とアメリカの銀行はビジネスモデルがかなり違うようです。これについては更に情報収集を進めます。

 

 

銀行員が事業性を見ることは可能なのか?

 

本書の中では繰り返し、形式的なデータではなく事業性に目を向けて企業への融資可否を判断していかなければいけないとありました。また、担保や保証に頼った融資判断ばかりしているから、銀行員の目利き力が落ちている、という指摘もありました。この指摘については本書に限った事では無く、色々なところから言われています。

 

で、銀行員が事業性を見る目を身につけられるのかという事ですが、私は難しいと思っています。いろんな業種、いろんな企業をみて研究するのは確かですが、あくまでも外部から見るだけですし、自分で実際にビジネスをやった経験があるわけでもありません。経験が無いというのが大きな壁になるのではないかと思っています。

 

もし私が経営者だったとして、自分でビジネスをやった事が無い人間に色々提案されたとしても、おそらく説得力に欠けると感じるでしょう。

 

料理人が料理をしたこと無い人間にあれこれ言われても、「なんなんだよお前」くらいにしか思わないのと同じです。

 

事業性を判断したり経営者としての視点を養うために最も良い方法は、やっぱり自分でビジネスをやってみる事だと思います。銀行員に目利きの能力を身につけさせようと思うのであれば、何らかの形でビジネスに携わる機会を作るべきだと思います。 

 

 

事業性を見て融資するという戦略を大規模で実施するとどうなるのか?

 

本書の中では、一度経営難に陥って取引銀行から見捨てられたものの、別の金融機関からの支援を受けて経営が回復したという具体例がいくつか掲載されています。

 

融資判断の際には企業情報を数値化した上で検討するわけですから、一定の基準に満たない場合はその時点で検討先から外れてしまいます。最初のふるいにかからない企業に対して融資を実現するのは難しいはずです。

 

ただ、このふるいは完璧なものでは無いので、将来性がありながらも融資を受けられない企業は当然存在します。

 

従来の基準で見れば融資をする事は出来ないが、個別に事業性を判断する事で返済能力があると判断でき、融資ができる企業は確実にあるのです。

 

個人的に気になるのは、今排除されているとする企業のうち、どれくらいの割合がこの「事業性評価において融資に値する」企業に分類されるのだろうか、という事です。

 

もしも融資に値する企業が排除されている企業のごく一部(例えば5%ほど)でしかなければ、ある程度の人員を割いて取り組むとむしろ損失が出たりしないかなと思ったり。

 

こればかりはやってみないと分からないわけですが。

 

 

 

本書の筋からは少し外れますが、青森でクラフトビールの製造に取り組むアメリカ人の事が書かれていました。

 

青森の人は、全国展開のコーヒーチェーンや回転ずしが遅れて進出してくると喜ぶが、どうして青森から全国に展開するような商品やブランドづくりをしようと考えないのだろう

 

 これなんですよね。最近頭の中にあるの。

 

アメリカで流行っているビジネスをそのままのモデルで日本に持ってくる。東京で流行っているお店を地方に持ってくる。

 

逆があってもいいじゃないかと。地方が情報や商品の発信地になっても良いだろうと。そんなビジネスに取り組みたいなと。