読書感想 橘玲著 『専業主婦は2億円損をする』 マガジンハウス
もう12月ですね。学業の方は何とかやっています。
最近あまり本を読んでいないのですが、先日久しぶりに読んだ本が面白かったので感想を少し書いておきます。
橘玲さんの『専業主婦は2億円損をする』という本です。
橘玲さんの本は何冊か読んだことがありまして、お金に関する本は非常に分かりやすく書かれていてお勧めです。
なぜか学校では人生において大変重要なお金の事を教えてくれませんので、個々人が自主的に学ばなければいけません。
「お金の話は難しいから、自分は別に勉強しなくていいや」
「お金の事は良く分からないけど、今のところどうにかなっているから
こう思う人もいるかと思いますが、私は絶対に違うと思っています。お金の事が分からないからこそ、全ての人が勉強しないといけないのです。
お金の事を知らないと、知っている人達にどんどん搾取されていくだけです。最初はみんな知らない事だらけですから、知らないなりにコツコツ学んでいくしかありません。
橘玲さんの本は、そんな「これからお金の事を勉強したい」と思っている人にとってとても参考になると思います。
今回読んだ本は女性がメインターゲットの本らしいですが、結婚して家庭を築くという事を考える限り、パートナーがどのような人生を歩むのかというのは男性にとってもとても重要な事です。
大学生の頃、橘玲さんの別の著書を読んでいて、
資産形成 =(収入―支出)+(資産×運用利回り)
という式を目にしました。そして、「これこそがお金持ちになる為の方程式で、例外は無い」、と説明がありました。
世に出回っているお金の本は、全てこの方程式のどれかに当てはめる事ができるとあって、学生ながらになるほどな―と思いながら読んでいた記憶があります。
- 収入:副業、転職で収入UPなど
- 支出:節約術など
- 資産運用:株式投資、不動産投資など
で、収入を増やすための手っ取り早い方法が働き手を増やすことで、
「世界一人件費の高い(たぶん執筆当時の事でしょう)日本で専業主婦を養う事は究極の贅沢」
という内容がやたらと印象的でした。だから今回この新著に興味を抱いたのでしょう。
この『専業主婦は2億円損をする』という本は、
- 専業主婦はお金が無い
- 専業主婦は自由が無い
- 専業主婦は自己実現できない
- 専業主婦はカッコ悪い
- 専業主婦になりたい女子は賢い男子に選ばれない
- 専業主婦には愛が無い
- 専業主婦の子育ては報われない
- 専業主婦は幸福になれない
- 専業主婦は最貧困のリスクが高い
- まとめると、専業主婦にはなにひとつ良い事が無い
という何とも辛辣な言葉から始まります。もちろん根拠もなくいっているわけでは無く、それぞれについて本の中でその論拠が説明されています。
面白い内容が沢山あるのですが、長くなるので特に印象に残った部分を2つほど紹介します。
何かに依存して生きなければならない人は、自由を失う
著者は自由とは「自分が好きなように生きる事」、と言っています。「自己決定権」とも述べていますね。
そして、さらに言い換えて「嫌な事を断れること」とも表現しています。嫌な事を断れないのは、そうしなければ生きていけないからなんですね。
で、嫌な事を断る為にはある程度のお金が無いといけないと。「お金が無ければ自由に生きられない、これを「経済的独立」というらしいです。
本の中の「お金が全てでは無いが、お金は自由の土台」という表現が、とてもしっくりきます。
会社をクビになったら生きていけない人は、例え嫌なことがあっても嫌だとは言えないわけですね。会社に勤める人たちは、会社に依存して生きているので。
同様に専業主婦はその生活をすべて夫に依存しているのですから、経済的独立を達成する事ができない。そうすると、彼女たちも自由を手に入れる事ができない、という事です。
世の中は女性にとって理想的な社会ではないが、その矛盾した社会で幸せを探す
働かなければ幸せになれないとはいっても、いまだに男女格差が大きい日本において女性が子育てしながら働くのは簡単ではない、と著者は述べています。
確かにWEF(World Economic Forum)の調査によれば、2017年において日本は男女平等のランキングにおいて世界で114位と、非常に低いです。
The Global Gender Gap Report 2017
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2017.pdf
詳しく見ていくと、このランキングは大きく4つの変数によって算出されていて、日本は健康分野では世界トップを誇るものの、政治や雇用の分野(給与格差、管理職に占める女性の割合、政治家における女性の割合など)においてまだまだ男女格差が残っているのが分かります。
面白い部分だったので、少し長いですが本の内容をそのまま引用します。
アメリカでは人種や宗教、年齢や性別で人を差別してはいけないという決まりが徹底されているために、企業が昇進や昇給、を決める基準は①仕事の成果、②学歴や資格、③仕事の経験という3つしか認められていない。
当然管理職の比率は大卒が多く、高卒が少なくなります。
世界に一つだけ、この原則が通用しない国がある。
それが日本。
- 大卒 の 男性 と、高卒 の 男性 が 課長 に なる 割合 は、40 代 半ば までは ほとんど変わらない
- 大卒 の 女性 は 高卒 の 女性 より 早く 課長 に なる が、 最終 的 には その 割合 は あまり 変わら ない
- 高卒 の 男性 は、 大卒 の 女性 よりも、 はるか に 高い 割合 で 課長 に なる
ある要素を調整すると男女の格差はなくなって、大卒の女性も男性社員と同じように出世している。その 要素 とは「 就業 時間」。
「日本の会社は残業時間で社員の昇進を決めている」。「日本の会社は社員に“滅私奉公”を求めていて、社員は中世のあかしとして残業している」。
非常に興味深い話です。
日本の企業は幼い子供がいる女性向けにマミートラックという仕事を用意していて、仕事の負担をするように配慮しているという事ですが、この配慮の為に昇進に必要な忠誠を示すことができないというのです。
女性に配慮したつもりが、逆に男女の格差を残すことになってしまっているというのは何とも皮肉です。
そしてそれは忠誠を基準に昇進を判断するという時代遅れの
さて、日本ではいまだに男女格差が残っていると書きました。だからと言って、この間違った世の中を正すべきだと言ってみても、なかなかそれは進みません。それは過去何年にもわたって国を挙げて男女の平等を実現しようとしたものの、大きな成果を上げられずに今日まで至ったという事実からも明らかです。
だから、世の中が間違っているという前提の中でどうやって幸せを掴んでいくか、これを考えていくべきだと著者は主張しています。
具体的には、
- 子育てを外注する
- 企業に属さないフリーランスとして、経済的独立を達成する
といった事が述べてありました。
読む限りでは、これはなかなか簡単な事では無いと思います。
子育てを外注するとなると、近くに手の空いた親族がいない限りはそれなりに金銭負担をしてベビーシッターを雇う必要が有ります。
また、フリーランスとして経済的な独立を目指すのも、とりわけ会社員として働いてきた人たちにとってはハードルが高く感じられるでしょう。
それでも、最近ベビーシッターのサービスを広めようというスタートアップが注目されていますし、
フリーランスという働き方も、一部ではかなり盛り上がっています。
こういったことが当たり前になって、経済的自立を達成する女性がどんどん増えるのも、近いのかもしれません。
さて、本の中では「賢いJK(女子高生)から20代の女性」向けに書かれたものだという記述がありました。
しかしながら、これから結婚して家族を築いていく私のような立場の人間にとっても、示唆に富む内容でした。私のような男性こそ読むべきではないか、そう感じたくらいです。
また面白い本があったら紹介します。